2020年3月29日日曜日

瑕疵(契約不適合)への対応


瑕疵(民法の改正により2020年4月以降の契約物件については契約不適合と言います。)とは一般的に不具合や欠陥のことを意味します。エントランスなど共用部に瑕疵があった場合や、区分所有者から専用使用部分の瑕疵について申告があった場合、管理組合が対応することになります。売主との間で締結した「アフターサービス契約」や、「住宅の品質確保の促進に関する法律(品確法)」を根拠に売主に対応を求めることになります。一般的な対応期間は躯体など構造上の主要な部分は10年、水回りが5年、その他が2年となります。多くの場合売主は期間の超過を理由に対応を拒否しますが、管理組合としては売主の主張を鵜呑みにして、引き下がる必要はありません。売主が対応を拒否したことを理由に、補修費用を容易に修繕積立金や管理費から支出してはいけません。(緊急を要するものは仮払で補修を実施し、実費を売主に請求。)

売主に責任を追及できるか否かの分かれ目は、不具合や欠陥の原因が引渡の前か後かによります。先ず不具合や欠陥を発見したら直ちに文書で売主に通知します。(時効による権利喪失を防ぐため)その後調査を行い、不具合や欠陥の原因が引渡前にあることが明らかになった場合は、調査結果を添えて売主に補償を求めます。売主は簡単には自らの責任を認めませんので交渉には時間を要しますが、ここで諦めてしまうと売主の思う壺です。必要に応じて専門家の力を借りて粘り強く交渉して下さい。(原因が引渡後にある場合は保険での対応等、別の方法を模索する必要があります。)

代表的な例は大規模修繕工事前の調査による瑕疵の発見になります。大規模修繕工事は10年から15年周期で実施されることが一般的なため、12年目に実施した事前調査で瑕疵が発見された場合、売主はアフターサービス契約や品確法の適用対象期間が過ぎていることを理由に対応を拒否します。マンション外壁のタイルに大規模な浮き(施工時の接着不良)があると補修に数千万円の費用が掛かりますので、修繕積立金から支出すると長期修繕計画で予定していた他の工事ができなくなってしまいます。コンサルタント(設計管理会社)の力を借りて証拠集め、売主と粘り強く交渉することが必要になります。

マンションの資産価値を守るためには、瑕疵(契約不適合)に対する責任を売主に追求し、適切な補償を得ることが必要になります。容易に修繕積立金や管理費から補修費を支出してはいけません。

2020年3月21日土曜日

修繕積立金の不足

修繕積立金の不足について、具体的な数値を用いて説明致します。国土交通省が2011年に公表している「修繕積立金に関するガイドライン」では、実在する各マンションの長期修繕計画書から数字を集計し、大規模修繕工事を実施するにあたり必要とされる金額を試算しています。それによると建築延床面積5,000㎡~10,000㎡の15階未満のマンションでは202円/㎡・月が必要(機械式駐車場があるマンションの場合は30%程増)とされています。一方、国土交通省指定の公益財団法人東日本不動産流通機構が2018年に公表している首都圏中古マンションの修繕積立金では、月額実績平均で161円/㎡・月という結果になっています。

必要額202円/㎡と実際額161円/㎡の差である41円/㎡が不足額という計算になります。
70㎡の部屋を所有する場合、月に2,870円(41円×70㎡)、大規模修繕工事の一般的な周期である15年間に渡りこの状態が続くと516,600円(2,870円×12ヵ月×15年)が不足します。

この場合、大規模修繕工事の際、管理組合は各戸に対し一時金として約52万円を徴収することになりますが、負担が難しい区分所有者が多いと、総会で否決されます。否決されても大規模修繕工事は必要なため、管理組合は金融機関から借り入れる(100戸の場合約520万円)ことになります。返済は大規模修繕工事後の修繕積立金に上乗せされる形で区分所有者が負担します。

一時金や借入返済の可能性があるマンションは一般的に買い手が付きにくいため、マンションの資産価値は下がってしまします。

マンションの資産価値を維持するためには、修繕積立金は必要額に応じて適切に設定しなければなりません。

2020年3月15日日曜日

修繕積立金の設定・見直し

修繕積立金は竣工時に売主(デベロッパー)が決めており、買主が購入する際は既に月額負担額が決まっているのが一般的です。修繕積立金は10年から15年周期で実施される大規模修繕工事に充てる重要なお金ですが、当初の設定額は根拠が曖昧で低すぎるという現実があります。デベロッパーの立場からすると、10数年後の大規模修繕工事には関心が無い一方、短期間で全戸完売させることが使命であるため、売りやすくするために修繕積金の金額を実際に必要な金額より大幅に低く設定しているという事情があります。

国土交通省が公表しているマンション総合調査からは、2010年頃から12,000円/月程度で安定している一方、完成年次別の内訳では、2010年以降に完成した新築物件に限っては8,820円/月と異常に低いことが分かります。

修繕積立金を低い水準のまま放置すると、大規模修繕工事を行うにあたって、修繕積立金では足りず、臨時で区分所有者から数十万円/戸を徴収したり、管理組合が借入をして賄う必要があります。そのような事態にならないよう、購入後直ちに修繕積立金が適切に設定されているか検証し不足があれば管理組合の責任で修繕積立金の月額負担額を適正な金額に変更しましょう。必要額の見積を管理組合の役員が行うことは難しいので、管理会社に相談し(必要に応じてコンサルタントを入れて)進めていくのが一般的です。

修繕積立金が不足していると、買い手が付きにくくなる(又は、希望額での売却が難しくなる)ため、マンションの資産価値は下がります。5年毎を目安(少なくとも大規模修繕工事のタイミング)に定期的に見直しを行い適正な水準を維持することが必要です。

マンションの資産価値を維持するためには、竣工引渡後直ちに修繕積立金の設定額を検証するとともに、以降定期的に見直しを行うことが必要となります。

2020年3月8日日曜日

防災設備点検

マンションには様々な設備がありますが、これらが劣化すると資産価値を押し下げます。特に以下の防災設備については有事に正常に機能するよう日頃からの点検が重要になります。

・免震装置(免震ゴム、オイルダンパーなど)
・非常用発電機
・消防用設備(スプリンクラー、ガス検知器、煙感知器など)
・避難はしご

免震ゴムやオイルダンパーは地震の際、高層階の揺れを抑える機能があります。竣工時に適正なものが設置されていれば直ぐに劣化するものではありませんが、一部にはメーカーが検査データを偽造した製品が取り付けられている場合がありますので、国土交通省が発信するプレスリリース(例:東洋ゴム工業KYB、カヤバシステムナシナリーなどを確認することが必要となります。非常用発電機はオイルで発電し、停電時にマンションに最低限の電気を供給する機能があります。1年に1回は管理会社が稼働テストを実施しています。消防用設備は1年に2回程管理会社が全戸を回って正常に機能することを点検します。避難はしごはバルコニーに設置されており、火災発生時に高層階から地上まで降りる際に使用します。

これらの設備がどこにあるのか?どのように使うのか?は、一般の区分所有者のみならず、管理組合の役員も知らないことが殆どだと思われます。有事の際正しく機能できるよう予め管理会社に確認しておくことが必要です。また、各住戸内の消防設備点検を行う際は留守にせず管理会社の点検に協力することが求められます。(賃貸の場合は賃借人に協力させる必要があります。)

区分所有者各位に興味を持って頂く切っ掛けとして、避難訓練を利用すると良いと思います。多くのマンションでは年に1-2回避難訓練を実施しておりますので、終わった後に、免震装置の見学会や、非常発電機稼働テスト視察、避難はしご体験会などを企画し管理会社に説明してもらう機会を設けると、区分所有者の皆様の理解が深まると思われます。

マンションの資産価値を維持するためには、共用の防災設備を確認すると伴に、各区分所有者が住戸内の消防設備点検に協力し、防災設備の有効性を確保する必要があります。

2020年3月1日日曜日

出納業務のチェック

管理組合は、管理会社と管理委託契約を締結し、主に4つの業務(事務管理、管理員、清掃、建物設備管理)を委託しております。(標準管理委託契約書参照)このうち、出納業務(管理組合のお金の出し入れ)は、事務管理業務の一部になります。管理組合のお財布を管理会社に預けることになるため、国土交通省はマンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下適性化法)施行細則で規定を設けておりますが、一部管理業者の横領事件等を踏まえ、2010年に口座(通帳・印鑑)の管理方法がより厳格に改定されました。

管理組合の収入のほぼ100%は区分所有者各位が毎月納める管理費になります。一方、支出の大部分が管理会社に毎月支払う管理委託費になります。

出納業務を管理会社に委託するということは、管理会社が管理組合の口座から自らの口座へお金を移す行為になります。適正化法に規定があるとはいえ、管理会社に丸投げは危険です。適正化法の規定通り運用されていることを管理組合として定期的にチェックすることが必要です。万一、管理組合の意思とは異なる支払いがなされた場合、管理会社は法的責任(ミスであれば注意義務違反、故意であれば不法行為責任)を負うことになります。

マンションの資産価値を維持する為には、管理会社が委託した業務を適切に執行しているか、管理組合として定期的にチェツクする必要があります。

理事会の運営方法を工夫しよう!

2024年11月も最終週に入ります。今年も残り僅かですね。管理組合では常に様々な問題が発生しております。今年のうちに解決すべき積み残し案件については、速やかに進めて参りましょう。今回は理事会の運営方法について説明いたします。 理事会は1~2ヵ月に1回の頻度で役員(理事・監事)が一...