瑕疵(民法の改正により2020年4月以降の契約物件については契約不適合と言います。)とは一般的に不具合や欠陥のことを意味します。エントランスなど共用部に瑕疵があった場合や、区分所有者から専用使用部分の瑕疵について申告があった場合、管理組合が対応することになります。売主との間で締結した「アフターサービス契約」や、「住宅の品質確保の促進に関する法律(品確法)」を根拠に売主に対応を求めることになります。一般的な対応期間は躯体など構造上の主要な部分は10年、水回りが5年、その他が2年となります。多くの場合売主は期間の超過を理由に対応を拒否しますが、管理組合としては売主の主張を鵜呑みにして、引き下がる必要はありません。売主が対応を拒否したことを理由に、補修費用を容易に修繕積立金や管理費から支出してはいけません。(緊急を要するものは仮払で補修を実施し、実費を売主に請求。)
売主に責任を追及できるか否かの分かれ目は、不具合や欠陥の原因が引渡の前か後かによります。先ず不具合や欠陥を発見したら直ちに文書で売主に通知します。(時効による権利喪失を防ぐため)その後調査を行い、不具合や欠陥の原因が引渡前にあることが明らかになった場合は、調査結果を添えて売主に補償を求めます。売主は簡単には自らの責任を認めませんので交渉には時間を要しますが、ここで諦めてしまうと売主の思う壺です。必要に応じて専門家の力を借りて粘り強く交渉して下さい。(原因が引渡後にある場合は保険での対応等、別の方法を模索する必要があります。)
代表的な例は大規模修繕工事前の調査による瑕疵の発見になります。大規模修繕工事は10年から15年周期で実施されることが一般的なため、12年目に実施した事前調査で瑕疵が発見された場合、売主はアフターサービス契約や品確法の適用対象期間が過ぎていることを理由に対応を拒否します。マンション外壁のタイルに大規模な浮き(施工時の接着不良)があると補修に数千万円の費用が掛かりますので、修繕積立金から支出すると長期修繕計画で予定していた他の工事ができなくなってしまいます。コンサルタント(設計管理会社)の力を借りて証拠集め、売主と粘り強く交渉することが必要になります。
マンションの資産価値を守るためには、瑕疵(契約不適合)に対する責任を売主に追求し、適切な補償を得ることが必要になります。容易に修繕積立金や管理費から補修費を支出してはいけません。